自然現象の解説

ブラックライトってどんな光?

1.ブラックライトってどんな光?

1-1.光全体から見たブラックライトの波長領域

光の種類と仲間

ブラックライトがどんな光であるのかを理解するために、まずは光の種類についてざっくりと理解をしておきましょう。

そもそも、私たちは見えているものを光だと認識をしています。

例えば、太陽の光であったり、LEDの光であったり、今回紹介するブラックライトがそれにあたります。

しかし、科学的に光であると定義されている幅はとても広いです。

下の図を見てください。

ラジオで使われている電波も、レントゲンで使われているX線も、光の仲間だということがわかります。

人間の目では見えない『ラジオの電波』や『X線』も光の仲間ということだね!

可視光領域

とても幅の広い光ですが、その光の中で私たちが見えている範囲はごく一部でしかありません。

そのごく一部の光のことを可視光といいます。

その可視光は、下の図のように赤色の範囲から紫色の範囲があります。

今回紹介するブラックライトは図の右側にあたる青色や紫色側の光です。

波長で示すと300nm~400nmのあたりとなります。

ブラックライトの光は、私たちが見えている紫色に近い色だということだね!

ブラックライトと紫外線

ここまでのお話を聞いてブラックライトと紫外線を同一のものであると認識している方がいますが、正確には少し違います。

紫外線は『UV-A(長波長紫外線)』『UV-B(中波長紫外線)』『UV-C(短波長紫外線)』といくつかの波長領域の総称です。

UV-AUV-BUV-C
320nm~400nm280nm~320nm100nm~280nm
紫外線の波長領域

確かにブラックライト(300nm~400nm)とUV-Aの領域はほとんど同じですが、UV-BとUV-Cとは違うことが分かります。

『ブラックライト=紫外線』という考え方ではなく『ブラックライト≒紫外線』と覚えておきましょう。

2.ブラックライトが持っている光エネルギー

2-1.X線の光エネルギーは強い

話は変わりますが、X線と聞いて皆さんはどんなイメージがあるのでしょうか?

おそらく多くの方がレントゲンを思い浮かべるのではないでしょうか。

そのレントゲンですが、何回も浴びると健康に良くないということは聞いたことないでしょうか。

どうして健康に良くないかというと、X線の持っている光エネルギーが強いためです。

2-2.赤外線の光エネルギーは弱い

一方で、赤外線はどうでしょうか。

温まるために必要なもので、ずっと浴びていても熱くなることはあっても健康を大きく害することはありません。

感覚的には、X線よりも体を温めてくれる赤外線の方がエネルギーが強そうですが、実際には赤外線の持っている光エネルギーはX線に比べるとはるかに弱いです。

X線と違い赤外線をずっと浴びることができるのは、持っている光エネルギーが弱いからとも言えます。

2-3.波長が短いほどエネルギーが強い

ここまでの光エネルギーの内容を下の図で解説すると、赤外線やラジオ波など波長が長い左側に向かうほどエネルギーが弱くなり反対にガンマ線やX線など波長が短い右側に向かうほど光の持っているエネルギーが強くなる。

とまとめることができます。

もう一度確認すると、波長が長いと光エネルギーが弱く、波長が短いと光エネルギーが強くなります。

この光エネルギーの考え方を可視光領域に限定して考えてみます。

そうすると、左側にある波長が長い赤色はエネルギーが低く、右にある波長が短い紫色側は光エネルギーが強いと言えます。

波長が短いブラックライトの光は他の照明器具より強い光エネルギーを持っているよ!

3.ブラックライトを使った実験

ここまで紹介してきたブラックライトですが、いろんな実験ができることでも有名です

では実際にブラックライトを利用することでどんな実験ができるのでしょうか。

今回は3つの実験を紹介します。

3-1.栄養ドリンクを光らせる

栄養ドリンクをブラックライトで光らせてみよう!

『水』と『黄色に着色した水』と『栄養ドリンク』を用意しましょう。

そしてこれらの液体にブラックライトを照らしてみましょう。

栄養ドリンクをブラックライトで光らせてみよう!
ブラックライトで照らす
栄養ドリンクをブラックライトで光らせてみよう!
栄養ドリンクが発光している!

すると水はそのまま透過してしまい、栄養ドリンクと同じような黄色の水はブラックライトを照らしても何も反応がありません。

しかし不思議なことに栄養ドリンクだけが発色する現象を確認することが出来ます。

なぜこのようなことが起きたのでしょうか。

これは栄養ドリンクの中にはビタミンB2(リボフラビン)が含まれています。

このビタミンB2はブラックライトに反応する性質があり、写真のように光らせることが出来ます。

3-2.蛍光鉱物を光らせる

そもそも蛍光鉱物を手に入れることのハードルが高いですが、ブラックライトでいくつかの鉱物を光らせることが出来ます。

ブラックライトに反応する岩石
ブラックライトに反応する岩石

ブラックライトは紫色に見えますが、そのライトを鉱物に照らすとなぜかピンクや黄色になります。

蛍光鉱物の中でも比較的有名な蛍石については以下のページにまとめていますので、よければこちらもご確認ください。

蛍石を加熱したときの様子
蛍石ってどんな石?

石の中にも面白いものはたくさんあります!特に蛍石は面白い石代表です!!

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3-3.緑黄色野菜の葉っぱの色素を光らせる

こちらの実験は少し手間がかかりますが、緑色の葉っぱの色素がブラックライトに照らされることで、赤色に変化するのは子どもだけではなく、大人もびっくりです。

4.ブラックライトを選ぶ基準

4-1.実用面と安全面を考慮

ブラックライトの実用面と安全面

ブラックライトは他の照明器具などに比べると光エネルギーが強いことは一度説明をさせていただきました。

特に波長が短くなるほどその光エネルギーが強くなります。

そのため、波長が短い光エネルギーが強いタイプのブラックライトのほうが、家庭でもできる実験が増えてきます。

その一方でエネルギーが強くなるということは、光を目に入れてしますと、目を傷める可能性が高くなることもでもあります。

手元にある395nmのブラックライトと343nmのブラックライトを見比べてみると、343nmのブラックライトには直視厳禁という注意書きがあります。

だからといって395nmのブラックライトを直視していいわけではないですが、波長が短いものは扱いに注意が必要です。

このように、子どもの実験用に使用するブラックライトを選ぶときは、実用面と安全面の両方から検討をする必要があります。

4-2.実験教室で使用しているブラックライトの紹介

そのような中で実験教室では395nmのブラックライトを利用しております。

ブラックライトの波長領域が300nm~400nmと言われているので、ブラックライトの中では比較的波長が長いタイプになります。

実際に使っているタイプはこちらです。

このブラックライトを利用している理由ですが、子どもが行う実験であれば395nmのブラックライトで十分な点と、光量が強いと『視認』できる点です。

395nmのブラックライトは人間の可視光領域を外れる手前ということもあり、はっきりと視認できます。

特にこのタイプはLEDが21個もついており、強く発光していると視認することができます。

そのため子どもたちも直接ライトの中を覗き込むということが少なくなります。

395nmのブラックライトだといくつかの鉱物とお札の印鑑部分を光らせる実験は残念ながらできませんが、先に紹介した実験はもちろん、そのほかの多くの実験も行うことができます。

お札の発光実験。ブラックライト343nm
343nmだと印鑑部分が発光
お札の発光実験。ブラックライト395nm
395nmだと発光しない

そのため小学生が行う実験の範囲であれば、安全性も考慮して395nmのブラックライトで十分かと思います。

4-3.改めて:ブラックライトの光を目に直接入れない

ブラックライトは他の照明器具と比べて光エネルギーがとても強いです。

一瞬見ただけですぐに失明と言うことは、無いかと思いますが、目を傷める恐れ十分にあります。

特に、小学生低学年より小さい子どもは無意識に覗き込もうとします。

もしご自宅でブラックライトを扱う実験を行うときは、その危険性を子どもに説明したうえで、楽しく実験を行いましょう!

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