感情を利用して記憶力を高める
先日、NTTドコモとすららネットが、興奮・興味・喜びの感情が学習中の記憶力を向上させることを示す、資料を発表しました。
すららネット
⇒ https://surala.jp/information/200325/
五感を使いそのときの体験を想起しやすくすることによって、記憶力を高めるといった研究は聞いたことがあります。今回の研究は、その五感だけではなく感情も利用することによって、子どもたちの記憶力を支援してこうとする、とても有意義な実験です。
研究発表の内容を別の角度で評価する
しかし、感情だけで本当に記憶力に変化が生じるのでしょうか。にわかに信じがたいがたいと感じた方もいらっしゃるのではないでしょうか。こうした発表や論文を見るときは、ひとつのデータだけではなく他のデータも探してみるといいです。しかし、同じ研究というのはないので、別の角度から評価する必要があります。
例えば、7つの感情のうち興味にしぼってみましょう。興味だけであれば「イアン・レズリー著、子ども40000回質問する」という本に、今回の研究と似たようなことが書かれています。詳細はまた別の機会にお伝えしますが、学力において好奇心は大切な要素のひとつであると書かれています。ここで注意しなければいけないのは、研究では記憶力について、書籍では学力についてと少し結果がずれている点です。ですが、子どもの興味を喚起してあげることがいいことであることには間違いないでしょう。
次に眠気の感情について考えてみます。眠気は今回の感情のなかでもっとも記憶力低下をもたらす可能性があると、特徴的な結果が現れています。これは、ペンシルベニア大学のHans P.A. Van Dongen博士らの、適切な睡眠をとらなければ集中力を保つことができないといった研究ととても似ています。2つの研究結果から、集中力の低下が記憶力の低下にもつながりそうだと考えれば、子どもの学習前に眠気を促すことはよくないと判断されます。
今回は14の感情のうち「興味」「眠気」に話しの焦点を絞りましたが、他の感情に効果がないわけではありません。積極的に「興奮」や「喜び」といった感情も活用していくべきでしょう。
大人が子どもにしてあげられること
さてこれらの研究結果から、大人が子どもにしてあげたほうがよいと思われることは以下2つです。
・宿題を行う前もしくは見ているときに「興奮」「興味」「喜び」の感情を喚起してあげる
・睡眠時間をしっかりと確保してあげ、眠気の感情が出ないようにして上げる
子どもの学力をあげるために塾に行かせているご家族も多いかと思います。その効果を最大限発揮するためにも、上記の2つのことを生活にとりいれてみてはいかがでしょうか。
【参考文献】
- 株式会社NTTドコモ,株式会社すららネット‘「興奮」「興味」「喜び」の感情が学習中の記憶力を向上させることを証明~感情に寄り添った学習指導・フォローによって学力向上を図るサービスの実現をめざす~’
- イアン・レズリー『子どもは40000回質問する』、須川綾子訳、光文社、2016年
- Hans P.A. Van Dongen, PhD; Greg Maislin, MS, MA; Janet M. Mullington, PhD; David F. Dinges, PhD
‘The Cumulative Cost of Additional Wakefulness: Dose-Response Effects on Neurobehavioral Functions and Sleep Physiology From Chronic Sleep Restriction and Total Sleep Deprivation’