水に塩を溶かしたり砂糖を溶かしたりなど、水に何かを溶かす場面は日常生活の中でもたくさんあります。そういった日常の素朴な体験をもとにでは水に塩はどれぐらい溶けるのか、そういった疑問点のもと実験をしています。
実験の都合上、結晶のもとは「塩」ではなく「ミョウバン」を利用しています。
なぜ結晶づくりにミョウバンを利用したのか。その理由はページ後半の「結晶づくりにミョウバンが使われる理由」に説明をまとめてあります。気になる方は下記文字からそちらをご確認ください。
1.ミョウバンの結晶を作るための理論
1.水にミョウバンを溶かす
水にミョウバンはどれだけ溶けるのかな?
まずは、水100gに対してどれだけのミョウバンが溶けるのかを調べてみましょう。
最初に水の中にミョウバン4.0gを溶かしてみます。すると何事もなかったかのように普通に溶けます。
さらにミョウバン4.0gを溶かすと、先ほどより溶けにくさを感じますが、問題なく溶かすことができました。
もう一度ミョウバン4.0gを溶かそうとすると、今度はうまく溶かすことができませんでした。
全体の平均で水100gに対して、ミョウバンはおおよそ11g溶かすことができました!
2.ミョウバンが溶けなくなった理由
最初は順調に水に溶けていたミョウバンが、途中から溶けにくくなったのはどうして?
これは水100gに溶かせるミョウバンの量が決まっているからです。
例えば、私たち人間も食べ物がたくさん食べると「お腹いっぱい」状態になりその後何も食べることができなくなってしまします。
水もミョウバンを溶かしすぎると、人間でいうところの「お腹いっぱい」状態となりそれ以上ミョウバンを溶かすことができなくなります。
この人間でいうところの「お腹いっぱい」状態、つまりこれ以上水にミョウバンが溶けなくなる状態のことを理科の言葉で「飽和水溶液」と言います。
そして、そのときに限界まで溶かすことができたミョウバンの量を「溶解度」と言います。
【飽和水溶液】
水に砂糖や塩やミョウバンなどを最大限まで溶かして、それ以上溶かすことができない水
【溶解度】
水に溶かすことができる最大の量
3.さらにミョウバンを溶かす
飽和状態になったらもうミョウバンを溶かすことはできないのかな?
ミョウバンの結晶づくりで重要なのは、この「飽和」状態になってからさらにミョウバンを水の中に溶かすにはどうすればよいのか、という点です。
人の場合であれば「お腹いっぱい」状態になっても、しばらくすればまた食べられるようになります。
しかし水の場合は、しばらく時間が経過してもミョウバンの溶かせる量に変化はありません。
ではどうすればミョウバンをより溶かすことができるでしょうか。
今回は水の分量はそのままに、水の温度をあげることによってミョウバンをより溶かしていきます。
下の表を見てみましょう。
不思議なことに水の温度を上げると、より多くのミョウバンを溶かすことができるようになることがわかります。
例えば100gの水に対して水温が30℃の場合ミョウバンは最大16.5g溶かすことができます。
この水の水温を70℃まで上げると最大で110.1gまで溶かせるようになります。
つまり水の分量が同じでも、水温を上げてあげればより多くのミョウバンを溶かすことができるということです。
水を温めることでより多くのミョウバンを溶かすことができる!
4.どうしてミョウバンの結晶ができるのか
熱い水にたくさんのミョウバンを溶かしたあと、水を冷やすとどうなるの?
ここまで水の温度を上げるとミョウバンが溶けやすくなることを説明しました。
では逆に、温めた水に大量のミョウバンを溶かしたあとに、水の温度を下げるとどような現象が起きるのでしょうか。
まず水100g水温70℃にミョウバン26.5gを溶かします。水100g水温70℃の場合、ミョウバンは110.1g溶かすことができるので、26.5gは問題なく溶かすことができます。
その後、水温を30℃まで冷やします。
ミョウバンの溶解度曲線をもう一度確認すると、30℃の水にミョウバンは16.5gしか溶かすことができないことがわかります。
つまり70℃の水に溶かした26.5gから、30℃の溶解度16.5gを引いた10.0gが水からミョウバンが析出されます。
このように温めた水に大量のミョウバンを溶かしたあとに、水温を下げることによってミョウバンを析出させることを「再結晶」と言います。
理科の実験で結晶づくりといわれているものはこの「再結晶」という理論を応用したものです。
温めた水にたくさんのミョウバンを溶かしたあとに、その水を冷やすことでミョウバンの再結晶ができるということだね!
5.結晶づくりにミョウバンが使われる理由
結晶づくりでミョウバンがよく利用されているのは、温度差によって水に溶ける最大のミョウバン量(溶解度)に大きな差があるからです。(ミョウバンの扱いやすさ安全性もあります。)
塩の溶解度を上の表で確認すると、水の温度が高くなるについて確かにより溶けるようになっておりますが、ミョウバンのように大きな差はありません。
つまり温度差によって塩を再結晶させるのはとても困難だと言えます。
そういった理由もあり今回の実験の結晶づくりにはミョウバンを利用しました。
温かい水でも塩はたくさん溶かすことができないから、塩の再結晶は難しいということか!
2.ミョウバンの結晶を作る実験!
それで、ミョウバンの結晶を作るにはどうすればいいの?
極端なことを言えば、沸騰させた水に大量のミョウバンを溶かして、その水を冷やすことでミョウバンの結晶を作ることができます。
できますが、ここでは理科の実験らしくミョウバンの量を制御しながら結晶づくりを行ってきましょう!
1.必要な道具
- ミョウバン 26.5g
- プラスチックコップ 2個
- プラスチックスプーン
- 水 100g
- はかり
2.「ミョウバン」と「焼きミョウバン」
「ミョウバン」と「焼きミョウバン」どちらのミョウバンを使えばいい?
「ミョウバンの結晶づくりをしよう!」とミョウバンを探しに行ったはいいけど、売り場に「ミョウバン」と「焼きミョウバン」の2種類が置かれていて、どちらを買えばよいのか多くの人が迷ったはずです。
さて、ミョウバンは大きく分けて一般的なミョウバン(本来はミョウバン12水和物と言われるもの)と、焼きミョウバンと言われるものがありますが、結晶づくりで使用するのは一般的なミョウバンを利用するとよいでしょう。
なぜ一般的なミョウバンのほうがよいのでしょうか。上の表を見てください。
焼きミョウバンよりもミョウバンの方が20℃と60℃の溶解度の差が大きく、再結晶による結晶づくりが行いやすいことがわかります。
もちろん、焼きミョウバンでも結晶はできるので、ミョウバンと焼きミョウバンによる結晶の作りの違いについて調べるのも楽しいのではないでしょうか。
普通のミョウバンを使ったほうが結晶が作りやすいということだね!
3.ミョウバンの結晶を作る実験の方法
1.はかりを使ってミョウバンを26.5g用意します。(1つめのプラスチックを使用
2.はかりを使って水を100g用意します。(2つめのプラスチックを使用
3.用意した水を沸騰させます。
4.プラスチックコップの中に沸騰させた水を100mL入れます。このときコップの形が変形しますが、気にせず入れます。
5.沸騰させた水の中に、用意したミョウバンをすべて入れます。沸騰により水が100gより少なくなっていますが、そのまま作業を続けます。
6.プラスチックスプーンを使ってコップの中の水を10回かき混ぜます。
7.数日間そのままにすると放置すると、ミョウバンの結晶ができます。
3.自由研究としてのミョウバンの結晶づくり
ミョウバンの結晶を自由研究のテーマとして扱いたいけど、どんなことを調べればいいのかな?
1.ミョウバンの結晶を大きく作る方法を考える
ミョウバンの結晶を大きくするためには大きく分けて2つあります。ひとつ目は溶かすミョウバンを多くすることです。
100gの沸騰した水にミョウバンを26.5g溶かして、その後水温を30℃まで下げるとおおよそ10gのミョウバンが再結晶化されます。
もし最初に26.5gではなく36.5gのミョウバンを溶かしたならば、20gのミョウバンが再結晶化されます。
2つめの方法は水をゆっくりと冷やすことです。ミョウバンを溶かした水を冷蔵庫に入れてると結晶が壊れやすくなり、小さくなりがちです。
大きなミョウバンの結晶を作りたい場合は、このふたつのことを意識しながら実験を行ってみましょう!
2.ミョウバンと焼きミョウバンの結晶の違いを調べる
ミョウバンと比べて、焼きミョウバンでは結晶を作るのが難しいことはすでに説明をさせていただきました。でも結晶が作れないというわけではありません。
実際に焼きミョウバンでの結晶を作ってみて、ミョウバンの結晶との違いを見比べてみるとよいでしょう。
4.まとめ
- 飽和水溶液とは水に砂糖や塩やミョウバンなどを最大限まで溶かして、それ以上溶かすことができない水のこと
- 溶解度とは水に溶かすことができる最大の量
- 温めた水にたくさんのミョウバンを溶かしたあとに、その水を冷やすことでミョウバンの再結晶ができる