理科自由研究の「実験」を始める前に知っておいてほしい10個のこと
1.研究と実験の違い
理科の自由研究をまとめるにあたって、まずは実験と研究の言葉の違いを理解しておく必要があります。この2つの言葉はなんとなく意味が似ているような感じがしますが、実際には大きくことなります。
それぞれの意味を辞書で調べると
【研究】実験や観察などを通して事実や理論を明らかにすること
【実験】仮説が正しいか、対照実験など一定の条件を設定して確かめること。
と書かれています。
つまり「研究」とは何かについて調べたいという目的であり、「実験」とは研究目的について調べる手段であるということです。
以上のことを図にまとめると以下のように考えることが出来ます。
今行っていることの意味を理解せずにその場の思い付きで実験を行うと、ひとつの実験結果が無駄になってしまうこともあります。
そんなことにならないためにも「研究の目的」のため今どんな「実験」を行っているのか、常に現在地を確認しながら「研究」と「実験」を進めましょう。
2.対照実験
対照実験とは条件をひとつだけ変えて、他の条件をそろえて実験を行うことです。
変えた条件がひとつだけであることで、その条件が実験にどのような影響を与えるのかを調べることができます。
一度に多くの条件を変えて実験を行っている児童生徒をよく見かけますが、複数個の条件を変えてしまうと、どの条件がよい結果をもたらしたのかが分からなくなってしまいます。
ただし例外として「温度」や「湿度」も関係している実験においては、まったく同じ実験環境をそろえることが難しいので、「できるだけ」同じにするぐらいに考えましょう。
この例外が当てはまる理科の自由研究のテーマのひとつに「シャボン玉作り」があります。
シャボン玉は「温度」と「湿度」によって割れやすさが変わってきます。
残念ながら「温度」と「湿度」を完全には制御することはできないので、方法としては1日のうちにすべての実験を完了させるか、別日の似たような環境で行うかになります。
そういった例外もありますが、そうではない実験においては、実験条件をしっかりと制御をして研究を進めていきましょう。
3.再現性
例えば、10円玉を右手の親指と人差し指でつかみ、その後50cm上にもち上げた後、10円玉から指を離すと、落ちるまでの時間は誰が実験を行っても同じ結果になります。
このように【1.同じ条件】で【2.同じ実験】を行ったら【3.同じ実験結果】になることを再現性と言います。
突然再現性なんて言われると「再現性なんて言葉を聞いたことがないし、なんだか難しそう」と感じてしまうかもしれません。しかし、以下の2つのポイントを押さえてそれほど怖がることはありません。
研究・実験手段の明確化
ひとつ目は、他の研究者が同じ実験を正確に再現できるように、実験の詳細な手順を明確にするということです。
まず、実験に使用した道具やどの薬品をどれぐらい使用したのかなどをしっかりと記録をします。さらに、実験条件と実験手順を細かくまとめておきましょう。
再現性が確保できる実験方法
もうひとつは、他の研究者が同じ実験を行い同じ実験結果となるため、できるだけ個人の力量や技術に関係してくるような実験作業をなくすということです。
シャボン玉を扱う研究を題材にこの再現性の確保について考えてみましょう。
ストローでシャボン玉を作った場合には、シャボン玉に送り出す空気量が個人の力量(肺活量)が問題となり、研究者によって実験結果が異なってしまいます。
また、モールなどを使ってシャボン玉を作る場合でも、個人の技量(腕を動かす速さ)が問題になり、実験結果が研究者によって違ってきます。
そういったことにならないように、例えば扇風機を利用して、シャボン玉に送り出す空気量を一定にするなどの工夫をすることで、だれでも同じ実験結果となります。
4.すべての実験の記録をとっておく
多くの人が、実験を行う前に実験結果について予想をしているかと思います。
予想をすること自体はとても良いことなのですが、その予想と反している実験の記録を失敗と決めつけて残さない児童生徒が割と多く見受けられます。
予想と反していたからと言ってテストの点数が下がるわけでもないですし、理科の自由研究の評価が下がるわけでもありません。
まして、間違えた予想をした自分を恥ずかしいと思ってしまう必要はまったくありません。
逆に予想に反していた結果が出たらそのこと自体が高評価されるぐらいです。
自分の予想に反していてもすべての記録をしっかりと残すようにしましょう。
5.写真をたくさん撮っておく
スマートフォンの所持率がこれだけ高く、多くの人が常に写真を撮っている中で、実験を行っている最中の写真はあまり撮られていない印象があります。
写真であれば、どのような実験を行っているのかその様子がわかります。加えて使用している実験道具も一目で確認することができます。
もちろんすべてを写真でまとめることはできませんが、自由研究をまとめるうえで最高のツールであると言えます。積極的に利用していきましょう。
実験の進め方
6.研究の目的を明確にする
研究の目的とは疑問に思ったことです。日常の生活の中で疑問に思ったことをそのまま研究テーマとして取り扱うのがよいでしょう。
ここでは研究の目的を「遠くまで飛ぶ傘袋飛行機」にしたとして、次の実験の目的について考えていきます。
7.各実験の目的
研究の目的に対して、どのようなゴール設定をして、そしてそのゴールを目指すためにどのような実験を行うのか、について考えていきます。
「より遠くまで飛ぶ傘袋飛行機を作る」を今回の研究の目的がであるならば、実験のゴール設定は
1.傘袋に取り付ける羽の枚数
2.傘袋に取り付ける羽の位置
3.傘袋に取り付ける羽の形
などが考えられます。ここでは最もわかりやすそうな「羽の枚数と傘袋飛行機の飛距離」について考えてみます。
8.実験方法をまとめる
次に設定したゴールに合わせてどのような実験を行えばよいのかを考えます。
この実験方法とは、実験の準備段階から測定までのことを指します。今回例に挙げている傘袋飛行機の場合であれば
1.実験で使用する道具
2.傘袋の作り方
3.傘袋の飛距離を調べる測定方法
が実験方法となります。
さて、この中で最も注意しなければいけないのが測定方法になります。この測定方法をあいまいにしてしまうと研究全体があいまいになり、結果すべて無駄になってしまうこともあります。
苦労して出した実験結果が無駄にならないようにするポイントは大きく分けて2つあります。
測定方法を明確にする
ひとつ目は「測定方法を明確にする。」ということです。
仮に測定方法を「傘袋飛行機を投げて、その飛距離を調べます。」としましょう。しかしこのままだと「飛距離を測定するための基準点を傘袋のどの部分にすればよいのか」が書かれていません。
見た目では同じような実験結果であったとしても、測定する基準点が違うために記録上は20cm以上違うなんてこともありえます。
五感に頼った測定方法を採用しない
ふたつ目は「可能な限り五感に頼った測定方法を採用しない。」ということです。
理科自由研究のテーマのひとつに「よく聞こえるスピーカー作り」というものがあります。
この実験テーマは性質上どうしても実験者の聴覚に頼らざるおえないわけですが、聞こえ方は人それぞれであり、再現性という点において疑問を感じられてしまうことがあります。
ではどうすればよいかは実験者の発想次第であり、そういったところが評価されるところであります。
「スピーカー作り」の場合で言えば、騒音計を利用する方法があります。騒音計を利用することで、音の大きさをヘルツという単位を利用して数値で表現をすることができます。
その他に五感に頼りがちな研究テーマとして「スライムの柔らかさ」「ケーキのおいしさ」などがあります。
そういった研究テーマを選ぶときには、どのようにしたら五感に頼らずに数値として実験結果を表現することができるのかを考えてみましょう。
9.実験結果
実験結果を見ると、数値だけの表でグラフ化していないもったいない自由研究があります。
もちろん数値だけの実験結果でも形式上は問題ないです。ですが、せっかく苦労して得た実験結果なので、可能な限り表やグラフなどを使用して、評価をしてくれる先生方が理解しやすいまとめ方をしましょう。
このとき、手書きの場合は定規やコンパスなどを使ってきれいに見せることを心がけましょう。やはりきれいなグラフの方が評価はされやすいです。
パソコンやタブレットなどを利用する場合は、比較的きれいにグラフを見せることができますが、肝心の文字や数字の大きさが小さいことがあります。
表やグラフだけのページの試し印刷をして、文字や数字の大きさに問題がないか確認しながらまとめるようにしましょう。
10.考察
実験の中において、先生方がもっとも重視しているのが考察です。みなさんがどんな実験結果からどのようなことを考えたのか、まさに評価ポイントとなるわけです。
その考察ですが、中には実験結果と考察が混じりあってしまっている残念な書き方をする児童生徒がいます。
実験結果と考察の違いについて改めて確認をすると、実験結果をまとめるということは、出来事を数値でまとめたりイラストで表現することであって、個人の考えをまとめる場面ではありません。
考察とは「個人の意見」や「実験結果の解釈」をまとめることになります。
どこまでが実験結果となって、どこからが考察となるのか、よく考えながら実験結果と考察をまとめられるようになりましょう。
また考察は実験における答えの部分となります。